シュタイナー 建築
☆ 中編 ☆

ルドルフ シュタイナー 建築
( 中編 )
【 構成 】
シュタイナー建築
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シュタイナー建築 ( 中編 )
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《 中編目次 》
■ 構想~設計
シュタイナーの造った空間・造形
建築を設計するとは
■ ゲーテアヌムの平面形態
■ 近代(現代)建築の流れ
■ Goetheanum の建設
★ ” Tea Break ”
シュタイナー建築を紹介する前に
《 筆者の本音 》
建築基準法まで変えた
”姉歯氏による構造計算書偽造事件”
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☆拙作:設計監理作品
☆凡夫の独り言・凡夫の芸術観
☆旅の途中:インドでの生活記
《 構想~設計 》

シュタイナーの造った造形
心の中の葛藤が空間になったような、ムンクの「叫び」のように、何かを語りかけてくるような不思議な造形。
ドイツ・ベルリン大学で”哲学”を学んだ、建築家・故・白井晟一氏(1905-1983年)の建築/形態に身を委ねた時のような そして、光に対する独特の”感性空間”に触れたときのような不思議な感覚。

ルドルフシュタイナーは、白井晟一氏同様に精神性を高める!
そんな”空間”を考えたのではないでしょうか。
そのためのキッカケ創りや思考贅肉の削ぎ落としの場としての建築。
物質的欲求や世間の常識/評価などに惑わされずに、常識という物差しでは量れないものや決め事などのない”空間”の重要性を私達に伝えているように思えます。
シュタイナーは、そのような”空間”に浸ることによって、より精神性が高められると考えたのではないでしょうか?
☆
シュタイナー建築

◇ シュタイナーの感性や心の衝動が型になったような造形!
◇ ”時”や”良い悪い/好き嫌い”という括り、そのようなことに躊躇せずに心(霊性)との対話で生まれた造形!
※ 私にはそのように思えます。
構想 > ・・・
建物の構想を具現化するために設計作業があり、その設計の確認のために模型やスケッチで検討を繰り返します。
シュタイナーもかなり大きな模型を造り検討しています。
スケッチも沢山描いたようです。

(第一ゲーテアヌム)

(第二ゲーテアヌム)

設計 > ・・・
何回も構想・理念・趣旨の確認をし、模型を壊したり・やり直したり、スケッチ作業を繰り返しながらの作業をしていきます。
そして、スタディ段階では、思考した理念が型や空間に表現できているかを検討し、行きつ戻りつを繰り返します。
※ 無から生み出す葛藤!
※ 光を掴み取るまでの闘い!
※ 形が生まれるまでの過程の悩みや苦しみ! などが設計にはあります。
建築を設計する
下に、第一・第二ゲーテアヌムの模型とスケッチ・平面図・断面図、及び グラスハウスの平面図・断面図、並びに巻末には私の愚作の模型や3DCG・スケッチと建物の完成写真などを参考に掲載いたしますのでご覧下さい。



地震国でないからだろうと思うが、空間に対しての構造(梁など)のメンバー (部材の寸法) が小さいのには驚くが、羨ましくもある。


ドルナッハ・グラスハウス
平面図・断面図
形状はツインドームで第一ゲーテアヌムを忍ばせます。
☆ ☆ ☆ ☆
構想・設計の最初
▽
ある意味では自然との対話
構想・設計段階では模型やスケッチ(現在では、3DCG)などで検討を繰り返しますが、念頭には”光”をどのように取り入れるかなどの自然との対話があります。
又、期間は、現在でも構想・設計から完成までは、住宅でも短くて1年半、大きな建物の場合には5年~6年かかる場合もありますので、あの時代の建設技術でのゲーテアヌムの構造設計や建設は大変だったと思います。
★ 光との対話 : 参考 ★
下の写真は、ルドルフ・シュタイナーの第二ゲーテアヌムのメインホールとル・コルビジェのロンシャンのホール内部の写真を同じ角度で写したものです。
どちらの建物も同じように光を側面の彫りの深い窓から取り入れ、同じようにステンドグラスを使っていますが全く趣が異なります。
おおよそ同じ時代の同じ地域に建つ建物ですが、感性や空間が作者によってこのように異なります。
どちらが好きか嫌いか/良いか悪いかではなく、異なる表現・手法での光との対話をご覧下さい。


《 平面形態 》
■ 第一 & 第二ゲーテアヌム
平面形態の分析の参考に、ガウディのサグラダ・ファミリア(教会建築・下部写真)の完成図と平面図を添付します。
例外もありますが、一般的な当時のキリスト教会建築(特にカソリック系)は、外観はどんなに複雑でも、このように単純な十字形の平面形態(クロスプラン)を基本にしていました。

平面形態の十字形!


これは当時のキリスト教会建築の特徴的な平面形態です。
もしも、意図的にシュタイナーが、このような平面形を作ったとしたならば、彼のメッセージが隠れているのかも知れません。
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このような考えも参考に!

《 近代(現代)建築の流れ 》
★ シュタイナー建築を見る前に、基礎的な近代(現代)建築の流れを簡単に説明しておきます。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
19世紀末、今までの時代の流れを変える装飾芸術運動(アールヌーボー/ユーゲント・シュティール)が起こり、 20世紀に入り1902年~1906年(シュタイナー:1861-2/27—-1925-3/30)、建築家ヴァン・デ・ヴェルデやヴァルター・グロピウスにより設立された「バウハウス」から近代建築の大きな流れが始まります。
「バウハウス」は、最初は、合理主義的(機能主義)なものと、表現主義的(神秘主義・精神主義的、芸術的、手工業的)なものが混合し教育されていたが、 後に 合理・機能主義が、バウハウスの中心的な傾向となり、ミース・ファン・デル・ローエが校長に就任してからはモダニズムへと建築の流れが変わります。
又、モダニズムの巨人/ル・コルビジェの「住宅は住む機械である」という宣言やフランク.ロイド.ライトの「有機的建築」が注目されている。
そのころ、日本の建築界では1920年、堀口捨己、山田守、石本喜久治等を中心に「分離派」が生まれ、 その後ル・コルビジェの流れを汲む前川国男や丹下健三らのモダニズムへと移行し、川添登、黒川、菊竹らのメタポリズム>日本から流れをつくった磯崎新らのポストモダニズムへと流れ、 現在は・モダニズムへと逆流し、コンピューター解析による大胆な構造をベースにした無構造派とも言うような建築造形へと流れていきます。
下の写真は、東京のオリンピックスタジアムの設計者で話題になった建築家・故/ Zaha HadidとFrank.O.Gehry(ビルバオ・グッゲンハイム)の建築作品ですが、 ごらんのように現在の建築界は、コンピューターにより「構造の束縛」から解放され、自由な造形で空間を造り始めています。


尚、シュタイナー建築やガウディ、スウェーデンの建築家ラグナール・エストベリー(ストックホルム市庁舎/1923 )などを日本に紹介したのは、今井兼次氏で早稲田大学で教鞭をとっていました。

1895 – 1987
今井兼次氏 は、桃華楽堂(皇居内)/ 碌山美術館(安曇野市)/ 多摩美術大学校舎(現存しない)等を設計し、 日本二十六聖人殉教記念館(長崎)はガウディのデザインパーツを、九州の大隈記念館はシュタイナーの第二ゲーテアヌムのデザインパーツを取り入れて設計しています。

《 建設 》
■ Goetheanum の建設

1913年9月20日に、スイス-バ ーゼル近郊のドルナッハ(Dornach)に、人智学活動の中心となるべき建物の建築が、シュタイナーの構想に基づいて始まります。
そして、約6年の歳月をかけて1920年に完成します。
しかし、1922年の12月31日に放火により焼失しています。
その後1925年には第二の建物の建設が始まり、シュタイナーの死後・1928年に完成しています。
この建物は、シュタイナーがゲーテの考え方から人智学の世界観を得たことにより、1918年にゲーテアヌムと名づけられ、精神科学の方法を自然科学、医学、農学、社会学、芸術学、教育学などの諸科学に適用する場として、 1920年10月以降・ゲーテアヌムは、「精神科学のための自由大学 ( Freie Hochschule fuer Geisteswissenschaft ) 」と呼ばれています。
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隣町(Belfort/France)近郊のRonchampにあります、20世紀の巨匠建築家ル・コルビジェ晩年の彫塑的名建築 「 ロンシャンの教会(下に参考写真掲載)」 は、1950年に教会側(アラン・クチュリエ神父)からコルビジェに設計を依頼されていますので、その20年も前に ” 彫塑的な巨大建築 ” の第二ゲーテアヌムは完成しているわけです。
設計/構想の大胆さと建設時の努力は大変なものだったと思います。

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シュタイナー建築を紹介する前に
☆ Tea Break ☆
” 私的思考と拙作 ”

私が描いたスケッチ
※ シュタイナー建築/私の考え方
私は、ルドルフ・シュタイナーの”思考”に興味があり研究してきたのですが、”シュタイナー設計の建物”にはそれほど興味があったわけではありません。
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ですから、拙作は、シュタイナーの手法や形とは全く異なります。
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しかし、構想・設計などではシュタイナーがやったような作業などを、私なりに繰り返してきましたので、設計の工程や”無から有”を生みだす苦労は分かります。
そんなことから、個人的自負になりますが、何か共通点もあるのではないかと思っています。

《 作り手の遊び心 》
私は、エレベーターに乗って扉が開いた時には、違う世界・違う時間にスリップしているのではないか!
そんなことばかり考えてしまう。
エレベーターが、
スーッと音もなく乗降し扉が開く時にはワクワクする。

そこで、私が設計した建物/そこに付随するエレベーターは、エジプトのスフインクスや振り子時計をデザイン化して時や場を乗降するものとして表現してみた。
スフインクスの中に入っていき、時間や空間を超えるのです。
利用者は気が付かないでしょうが、それでいいのです。
・・・ 作り手の遊び心です。
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建築設計の中に個人的な夢を入れ込み
形や光の導入という造形(自然美)に”作り手の遊び心”を忘れないように心掛けてきました。
・・・ そんな(くだらん)建築作品の紹介です。

宜しかったら、・・・
下記:” Private Corner / 建築を考える ” のアンダーライン文字をクリック(タップ)してご覧になってから、次のシュタイナー建築紹介に入ってみて下さい。
” Private Corner / 建築を考える ” は、全くの個人的なページになっています。
現在は、リタイヤした人間ですが、以前にはこのような建築作品を設計していた人間ということも解って頂きたいという願望があります。
ある意味では、ナルシスト的ページですが、興味のある方は息抜き程度にご覧ん下さい。
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☆ Private Corner / 建築を考える
■ 筆者の設計作品紹介
” 光そして陰翳礼讃 ”
■ 建築を考える
芸術観
旅の途中(インド)
生活の矛盾
生きるとは
■ 構造計算書偽造問題
等などを記載しています。
☆ ☆ ☆
- Tea Break -
END
次は、
シュタイナーの建築作品紹介
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シュタイナーの建築作品
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