姉歯構造計算書偽造事件

シュタイナーの瞑想法/リスボンのスケッチ


記) 2006年 冬


忘れつつある出来事の一つ!
過去になりつつある、姉歯氏構造計算書偽装事件について!

話題騒然の時、2005年の年末に私共の事務所にFAXが届きました。
TBSテレビ局の「イブニングニュース」のアンケートのFAXです。

100社の設計事務所に無記名でのFAX回答の依頼でした。

質問の中の一つ、この事件の背景に有るものは何だと考えますかとの問に、「姉歯氏」が行った行為は一番悪いとし、 次に国民の建築に対する意識の低さ(不動産的な価値観の見地重視)やマスコミの迎合主義に対する批判、コメンテーターの知識の無い発言に対する批判を書かせて貰いましたが、TBSは無視しました。

長文だからではありません。司会者(テレビ局)やコメンテーターの安易な批判に同調したものしか取り上げないのが現実です。

ましてや自分たちの事を迎合主義とか言われては取り上げるはずがありません。

回答を寄せた設計事務所は10数社との事ですが、政府(みなし官庁?)や姉歯氏を批判する文面だけが読まれています。


マスコミに出ている司会者やコメンテーターは俄か知識で知ったかぶりや正義の味方・被害者ぶっておりますが、残念ながら視聴率稼ぎとしか思えません。

真相は、司会者やコメンテーターが意見を言えば言うほど、「藪の中」に入り込んでいるのが現状ではないでしょうか?

年収数億円以上の司会者が「マンションは、我々庶民にとっては、一生に一度の買い物・・・云々」
その司会者が夜な夜な高級な「銀座のクラブ」を飲み歩いているそうです。

日本の庶民は、たいしたものです。
その人達が、法まで犯してはいけませんとのコメントどまりなら許せますが、姉歯氏や周辺の人たちのモラルや倫理観まで言い始め、 しまいには人権に関わる姉歯氏の頭部偽装(カツラ)まで、面白おかしく取り上げていました。

報道機関・テレビ局は、自分たちの偽造した番組や報道の多さを棚に上げていませんか?
1985年のテレビ朝日「アフタヌーンショー」で放映された女子中学生集団リンチ場面のディレクターが仕掛けた”やらせ – 偽造”は刑事事件にまでに発展しています。

又、朝日新聞の沖縄での、珊瑚・傷つけやらせ(偽造)報道や21014年に朝日新聞の社長が、あやまった”韓国従軍慰安婦”問題。

これは国辱的な事件のデーター(イカサマ師的な人がでっち上げた記事)を検証も裏づけも取らずに、世界に発信し、自己保身のために永い間放置していたこと。 等など  自分達のモラルの無さはどうしたのでしょうか?

「菊と刀」という名著で、ルース・ベネディクトが述べた 「日本人は、恥を知る民族であるが、罪を知らない。」 という言葉が有名です。 しかし、今の日本人は、恥も罪も知らない民族に成り下がってはいまいか?


現在では、マスコミは第4の権力になっています。
・・・ 自覚があるのか疑問です。
・・・ 権力を持った側は特に謙虚にならなくては、民主主義は成立しません。

テレビ局のアンケート用紙に私の意見を書いてから半年くらい経って、フジテレビ系列/関西テレビの人気番組「あるある大辞典」のやらせ問題(偽造)が出て、社会を大きく賑わせています。

このテレビ局の偽造は、あの姉歯問題を自分達が取り上げている、かなり前から行われていたそうです。

「もう、ここまで来ると笑い話ですが、辛くもなってきます。」


資本主義社会! 我々は、気がつかないうちに、次の言葉を言ってしまいます。
「お金を儲けて何が悪いのですか?」
・・・・・・・ この言葉!

姉歯氏の構造計算で建てたマンション販売会社 / ヒューザー社の社長「小嶋氏」や村上ファンドの「村上氏」、一世を風靡したライブドアーの「堀江氏」などが言っています。

資本主義社会では、ちっともおかしくない事ではないでしょうか?
極論ですが、今の社会は、儲けかたの方法なんてどうでも良いのです。

勝ち組にならないと社会は認めません。
商品が、売れなければ仕方ありません。
売れて何ぼです!

その先にあった事件が「姉歯氏構造偽造事件」だったような気がします。

姉歯氏個人の問題で済ませて良いのでしょうか?
建築家は勿論、日本人・日本社会の価値観がおかしくなっているのではないでしょうか?
このことは、人間及び人間社会の驕りに思えて仕方がない。

★ 悲しい事です!
 
” この事件 ” で、元請けの建築設計事務所の所長が鎌倉の自宅で自殺し、姉歯氏の奥さんがビルから飛び降り自殺しています。

建築確認申請には、構造設計者の明記はなく、元請けの建築設計事務所・一級建築士が明記されその責任を負う形になっていました。( 現在は、法改正され構造者の明記があります )

多分・ 私の経験からすると元請けの建築設計事務所の所長は、支持もしていないし・そのような偽造をしていることを知らなかったのではないでしょうか?



冗談ではなく、元請けは私のところだったかもしれないのです。
同業者としては、他人事ではない出来事です!

元請けの設計事務所は、構造設計者を信頼して、発注(外注)しているのが現状です。・・・ ですから、難しい問題です。

多くの大きな建物の建て替えや損害賠償等など、
クライアントや政府から責任を問われれば、”自殺”ということにもなったのかもしれません。

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☆ 倫理観 ☆

私の想像ですが、・・・
何故、姉歯氏が構造計算書の偽造をしたかというと、彼に構造を頼むと躯体などの建設費が安く済むという観点だけでの構造設計で、社会のニーズに合った。

そして、元請けやクライアントは喜び、彼の技量だと思っていた。
彼のところには仕事が多く来るようになり、彼も潤い・段々と偽造や法違反までしても安くしようとする深みにはまっていったのではないか?

・・・ まさしく倫理観の欠如である!

物質的・金銭的価値観でしか判断しなくなった世の中!
便利になった! 豊かになった! 世界が統一(金太郎飴)されてきた。
しかし、私達(私)は大切な 何かを、置き忘れて 走り続けたのではないでしょうか?



欧米のルネッサンス以降の人間中心主義!
モノの良し悪しや、思考、何でもかんでもが人間中心の世界!

・・・ 日本には異なる文化や考え方があった筈だが。

インドにて


私は、今まで考えてきた生き方を実行するため、このことを機会に、事務所をたたみ自己を見つめ直す旅に出ることにしました。

旅先はインドで、放浪旅をし、サドゥと生活を共にし、今生・今ここに生きていることの意味を見つめ直すことにしました。

所謂、ドロップアウトで、ある意味では現状からの逃避です。

何故に、インドなのかは、若き頃旅したインドが念頭にあったのだと思います。

インド/バラナシ・ガンジス河の夜明け